こうほうとおしごと?
手足をぎゅうと丸め、膝を抱える。長く息を吸い、深く息を吐く。膝の上に額を載せた姿勢のまま、少女は怨嗟の声をあげた。
「格差社会反対……格差社会反対……」
「まあまあ」
その声は、我が友、李徴子――ではなく、共に本日の任務を終えた神田忠臣である。その爽やかなご尊顔はいつもより遠い。神田もまた同学年男子ズの例に漏れず背がすらりと高く、顔も声も遠い一人だ。目下、苗字名前はベンチの上で三角座りをしているので余計に遠い。
膝からわずかに顔を上げ、うめく。
「脚長族滅……脚長族滅……」
「拗らせてるなあ……」
呟いてから神田の頬とが引きつった。と――
「おやあだな。がっかりしてめそめそしてどうしたんだい?」
「王子。おつかれ」
聞き慣れた涼やかなテノールの声の持ち主に神田は全面歓迎の構えを示しているが、名前は視線を鋭くした。めそめそはしていない。がっかりはしているが。
「うん? なにかな?」
幼馴染みの王子一彰が慣れたように屈んでこちらに目線を合わせてきた。彼は常と変わらず、黙したままこちらをまっすぐ見つめてくる。凪いだ一対の翠玉に、半眼になった己の姿だけが映っている。幼馴染み殿の紳士ぶりが、その気遣いが、今はそこはかとなく痛い。心のシールドががりがり削れていく。
名前は膝を抱えたまま告げた。
「脚長族滅。ぷりーずごーばっく……」
「はははは。なんだい藪から棒に」
犬歯を見せてうめく名前にまばたきを返し、一彰は首を傾げた。脚も手も指も睫毛も瞳に落ちる影も何もかも長い。恨めしい。
「やー、なんか知らんが、この子、さっきからずっとこの調子なんだよ」
「さっきからって、六穎館組座談会の時から?」
やんわりと「困った子だね」と微笑む一彰に、神田は頭を斜めに傾げた。
「うん。今日は蔵内のインタビューがメインで、俺も苗字ちゃんもそのついでみたいなものだよ。弓場さんと蔵内と一緒に集合写真撮ってすぐ終了したし……ああ、でも、なんかそのへんからだいたいこんな感じだったな」
「お、神田と王子じゃん。おつかれ〜」
黒スーツに身を固めた犬飼澄晴が気楽に声をかけてきた。一部ではコスプレと定評のある二宮隊の漆黒スーツであるが、その実、二宮隊隊員にはよく似合っている。つまり、選ばれし者がきちんと装備すれば、脚がより一層シュッと長く見えるのだ。けしからん。羨ましい。妬ましい。
「脚長族滅脚長族滅」
「お、苗字ちゃんもいたんだ。進学広報おつかれ〜」
「脚長族滅脚長族滅脚長族滅」
険悪な表情を作ってひたすらに唱え続ける名前の呪詛に怯まず、犬飼はきらきらしい笑顔を浮かべている。
ぽん。
心地よく、偉大な繊細さと複雑味のある香りを持ち合わせた笑顔を浮かべ、犬飼は左手で作った拳で右の手のひらを打った。
「なんか、そうやって三人並ぶと囚われの宇宙人図みたいだね」
「犬飼くんきらい」
苗字名前は三角座りの構えのまま、犬飼=サンに宣戦布告した。まことに遺憾ながら不可抗力でたまたま自動販売機と神田忠臣と王子一彰に並んでいるだけである。マッチ棒やコインよろしく実物大確認の比較にご利用いただきたくはない。脚長族に慈悲はない。ハイクを詠め。
「えっ、なんかごめん」
「…………」
巨大なため息を吐き、がっくりと膝の上に額を戻した。
「なになに? 反抗期かな?」
「いやいや、スミくん。謝られる方が傷つくってことさ」
「まあまあ……」
脚長族たちの全くもって隠せていないコソコソ話に名前は苛々と眉を釣り上げた。
「センセ〜! 男子がうちの名前ちゃんいじめてま〜す!」
果てしなく明るい声が割り込んできた。
「おや、ブラザーくん」
「どうも。苗字
「あ、どうも」
「え、あ、ありがとうございます?」
兄である。支給された職員制服の上に羽織った白衣ポケットから缶を取り出し、いつも通りお手製クッキーを皆に配り始めたらしい。
「これはうまい」
「うん。甘すぎなくて、このサクサクした食感が美味しいです」
「ブラザーくん、また腕を上げたんじゃない?」
「お? ニックネームに褒められるとそんな気してくるな〜」
なにやらほっこりし始めた一同を見上げる。兄のブラザーと目が合った。大層腕の良い彫刻家が魂を込めて作ったと昔からご近所でも謳われているその美しい眦と頬を上機嫌に緩め、兄が宣った。
「おお、妹よ。なんかそうしてると囚われの宇宙人図みたいだな」
「お兄ちゃんきらい」
「うははは。お兄ちゃんがその分あだなのこと大好きだからノープロブレムだ!」
長い両腕を大きく広げた兄とクッキーで懐柔された脚長族共を名前は半眼で見やった。
兄は大きくまばたきをすると、骨ばった大きな手のひらで口元に筒を作った。
「なになに? この子、遅い反抗期?」
「さあ? 反抗期かは分からないけれど、カンダタの話では進学広報の集合写真撮影が終わる頃からあだなはこの調子なんだとか」
「ふーん。まあいいか」
兄は気の抜けたような返事をすると、脇に抱えていた端末の液晶画面をタップしてみせた。
そこに写っていたのは、気を付けの姿勢で右から順に並んだ蔵内和紀、弓場拓磨、苗字名前、神田忠臣の集合写真だった。
「……山ありて谷ありけり……やっぱ弓場さん脚長ェ〜」
無邪気に感想を零す犬飼に、名前は半眼になると、
「犬飼くん」
「おっと苗字ちゃん。まだ何も言ってないよまだ」
顔がこのうえなくとてつもなく果てしなく言っている。やけにきらきらしい笑みで返されても何も心に響かない。
画像データの全体像をくるり、と長い指でなぞり、兄はあっけらかんと後を続けた。
「根付さんから神田くんと名前に伝言。ご覧の通り、誌面掲載時、一番小さい名前に焦点合わせると神田くんたちの肩から上、要するに肝心要の顔が入らない由々しき事態になる。で、反対に神田くんたちに合わせると、名前は生首部分が少しだけ収まる形になる。絵面がよろしくないから去年と同じ手――最初に撮った方を使うってさ。あらかじめ把握しておけとのお達し」
「はい。承知しました」
すぐに理解を示した神田の横で名前は頬を膨らませた。兄の視線が、こちらへと移る。
「名前、返事は?」
「やだ」
「名前」
「やだやだ。去年と同じ構図は絶対にいや」
一斉に集中する視線とは合わせずに名前は膝に顔を伏せた。少し考えるように沈黙を挟んでから、兄が呟きを発する。
「珍しくごねるなあ。去年って何かあったっけ?」
「去年秋に進学広報が出て。来馬さん、二宮さん、加古さんが六穎館先輩代表で、後輩係の一年生にあだながちょうどよいからって任命されたんじゃなかったかな」
一彰の声が耳元に届く。神田も明るい声で続けてくる。
「ああ、二宮さんと加古さん、来馬さんと一緒に去年は苗字ちゃんが座談会したんだっけ」
「おお、あの伝説回か!」
ぱん、と手にひらを合わせたのは犬飼だ。
「伝説って何だっけ?」
聞き返すブラザーに犬飼は即答した。
「うちの二宮さんと加古さんの座談会発言部分はばっさりカットされたんですよ。二人は座談会ページは写真と質疑応答の少しだけの友情出演。座談会部分は確か記者が用意した五個くらいの質問を苗字ちゃんが先輩方にぶつけたという形で掲載されてましたね。二宮さんと加古さんの発言登場はそこだけ。で、代わりに来馬さんの単独特集が大幅に組まれて八ページのインタビューが掲載されて、急遽嵐山隊のテスト対策寄稿文も載ったという伝説回でした」
「二宮さんと加古さんが? なんでそんなにばっさりカットされたんだっけ?」
「大人の事情」
「ああ……」
神田の質問にはこれまた犬飼があっさり答えた。その声音はとても明るい。自隊の上司に起きた事件を、彼は明らかに面白がっている。
全てを汲み取って多くを語らない神田。一彰のしみじみと馳せるような声。
「あったねえ。確か、座談会ページで二宮さんと加古さんに挟まれてたあだなが見たことない困った顔で写っていたよねえ」
「おお、あった。これだな」
「ブラザーくん、見せて見せて」
どうやら兄が端末から去年の進学広報の電子版を探し当てたらしい。興味津々といった一彰の声が耳に届く。
「おお!」
「これは!」
「わあ……」
「すとーっぷ!」
歓声をあげる一同に名前はとうとう叫んだ。
が、彼らは名前の悲鳴を無視して、進学広報を覗き込んでいる。
進学広報のスナップと、立ち上がった名前とを彼らの視線が行きつ戻りつした。
「…………」
何も言えず、名前もまたじっと彼らを見返し、端末に顔を向けた。
写っているのは、六穎館高等学校の制服に身を包んだ四人の集合写真である。広報誌の表紙にも質疑応答ページにも使われた一枚だ。椅子に座る一年生を囲むように三年生が三人並び立っている。A級で隊長を務め、ボーダー指折りの実力も洗練された美しい容姿も小学生じみたキャットファイトも何もかも有名な二宮匡貴と加古望の二人が椅子を挟むように左右に立っている。二宮は普段通りの冷静な表情のままだが、対照的に加古が華やかな笑みを浮かべている。互いの美しさをより一層引き立てているようにも見える。
椅子の後方に立つのはB級隊長の来馬辰也だ。温厚篤実な彼の人柄そのものを表した穏やかで見ているこちら側の心まであたためてくれる柔和な笑み。そして、中央の椅子に腰掛けるのは――
六穎館高等学校の制服ブラウスにおろしたての指定カーディガンを羽織った初々しい一年生――苗字名前(15)――の姿である。かろうじて、カメラに向かってはにかんだような笑みを見せている。
「えーと」
なにやら、スナップを指さし、そして眉間に濃い影を刻みながら、兄が言いよどむように困惑の顔を見せている。名前は嘆息して、彼を見上げた。
「お兄ちゃん」
至極真剣な顔つきで妹を見つめ、兄は告げた。
「正真正銘の囚われの宇宙人……いや、四天王最弱の姿?」
「いやだって言ったのに! 二宮先輩が突っ立ってないで座れって言うから!」
わっと名前は両手で顔を覆った。
そもそも、メディア対策室長の根付栄蔵から名前がこの進学広報誌の仕事に出るよう昨年任命されたのは、「ちょうどよいから」である。
ボーダー提携の進学校一年生。一般的なボーダー戦闘員。B級所属とはいえ、隊長ではなく、所属隊の中でも最年少。六穎館高校新一年生の中でも小柄な苗字名前は、ボーダー第一線で華々しく活躍中の三年生にして隊長である二宮、加古、来馬たちとの比較図にちょうどよかったのだ。進化前、進化後のポケットモンスターのように。
進学校でも勉学と防衛任務は楽しく両立できる。堅実にたゆまぬ努力を続ければ彼ら三年生のように勉学でもボーダーでも君自身も強く輝ける――
進学塾の宣伝さながらのイメージアップ戦略で、この進学広報誌はボーダー隊員、入隊を考えている学生の皆さん、保護者の皆様、スポンサーの皆々様向けに発行された。好評を博したこの広報誌特別号は、今年も発行の運びとなったのだ。そこで抜擢されたのは、春に六穎館高校を卒業するB級隊長の弓場拓磨、B級上位チームで華々しく活躍しながら生徒会役員も務める蔵内和紀、ボーダー提携校ではない大学への進学を考えている(らしい)神田忠臣、そして――苗字名前(16)無事に二年生に進級した姿である。
名前が今年も呼ばれてしまったのは、メディア対策室長曰く、「子どもと動物が登場するモノは外さないのが世の習い」だからなのだそうだ。これがよく分からない。他にも「去年よりこんなに大きくなりました」と季節の便りで挨拶する礼儀も大切にした、など不思議なことも仰っていた。しかし、根付室長は、春先のあれそれで兄と共に頭が上がらない存在なので多少の不思議は些事である。罪滅ぼし、だいじ。
脚長族と小柄な自分が比較されるのはまだ良い。まだ耐えられる。自分には伸びしろがある。この先もっと身長が伸びる(予定である)ので、本懐を遂げ華麗なる成長を果たした後、広報誌の写真は良い思い出話となるだろう。だが、四天王スナップは嫌だ。絶対に嫌である。昨年の広報誌でこの構図となったのは、二宮匡貴の進言のせいである。四人全員が立っても、全員が椅子に座っても脚長族の彼らと短足族の名前はちょうどよい一枚の画に収まらなかったのだ。そこで、二宮が言ったのだ。「突っ立ってないで座れよ、苗字」と。
かくして、四天王スナップが爆誕した。哀しい。とても哀しい。
今年こそはなんとしても阻止したい。おかわりだめ、ぜったい。
なぜならば、この四天王図が世に出たことで、名前はえらい目に遭ったのである。過激派ファンによる嫌がらせや嫉妬にさらされたというわけではない。「加古さんの愛犬」としてしばらくの間、六穎館高校で顔と名が広まってしまったのだ。完全に珍獣扱いである。教室移動ですれ違った加古に元気よく名前が挨拶をした。加古が笑顔で応じた。ただそれだけの先輩後輩のごくありふれた一コマである。けれども、そのシーンを目撃した上級生が証言したのだ。「加古さんは慈愛に満ちたまなざしをしていた。愛犬に接するやさしい笑顔だった」と。
極上の加古スマイルを一目見たい六穎館加古ファンの間で広報誌は飛ぶように売れた。加古の発言はほぼ全てカットされているのにもかかわらず、売れた。推しはただ輝いていればよい。元気でいることだけがこの世を照らす光であり、いのちそのもの。なにやらそういうことらしい。
ボーダー進学広報にあの加古さんと一緒に写っているレアな一年生ということで、まったくもって誤解であるが、苗字名前は加古望の愛犬として名が売れてしまった。
加古は気分を害すことはなく、教室移動ですれ違うたびに気さくに声を掛けてくれた。そう。彼女は面白がっていたのだ。「タイが曲がっていてよ」とマリア様も見ていそうな台詞と共にネクタイも結んでくれた。ギャラリーの歓声は瞬間最大デジベルを記録した。
加古のクラスの時間割を名前は覚え、しばらくの間、教室移動で加古がクラスの前を通るときには教卓の下に隠れて休み時間をやり過ごしたし、名前が三年生の校舎を通る際は目指せ忍者の心意気でステルス活動に努めた。加古にも友人にも笑われたが、名前はかくれんぼレベルがアップした。チームランク戦にも少々役に立った気がするのでよし。二宮や来馬の愛犬扱いをされなかったのがせめてもの救いである。
今年もそれが再現されたら困る。大いに困る。尊敬する先輩の弓場、次期生徒会長と噂される蔵内や共に受験戦争に身を投じる(らしい)神田の愛犬扱いなどされたら非情に気まずいし居たたまれない。スクールライフが送りづらくなること山の如しだ。なんとしても阻止したい。
「よーしよしよし。ぐっがーる」
がしがしと愛犬ならぬ妹の頭を撫でる兄の大きな手のひら。名前は何も言い返す気になれず、なすがまま頭を揺らした。抵抗しない妹に兄は鼻歌交じりで頭を撫で続けた。調子の明るいそのメロディーは、サバンナで王座につく者の心構えの『サークル・オブ・ライフ』である。
一彰が秀麗な眉を上げた。そして、人差し指を、ぴん、と立てた。
「四天王図代替案として、カンダタたち三人の集合写真右上あたりに丸く切り取ったあだなの写真を入れてもらうというのはどうだろう?」
幼馴染み殿の涼やかな翡翠の瞳に、ひたむきな輝きが浮かぶ。
「ニックネーム! それだ! ありがとう!」
「おお、ニックネーム! 天才!」
幼馴染みの名案に感激した名前に兄もまた思い切り顔をほころばせた。
「よしよし。この兄に任せなさい。お兄ちゃんが根付さんに言ってこよう。ビシッと」
最後にぽんぽん、と名前の頭に手を置き、兄はいつになく軽やかな足取りで去って行った。やや調子の外れたサバンナで王座につく者の心構えのメロディーが遠ざかっていく。
「一件落着だね」
一彰はそう呟くと、ブラザーが置いていったクッキーを指で摘まんだ。缶を持ち上げ、こちらへと差し出してくる。名前もプレーンクッキーを一枚取り、犬飼と神田に缶を回した。けれども、二人が手を伸ばす気配はなかった。
怪訝に思い、顔を見やる。二人は奇妙な表情を浮かべていた。眉を引き締めて、なにやら考え込んでいる。
と、くるりと名前の方を向いて、神田が首を傾げた。
「王子のアイデアだと、苗字ちゃん、卒業アルバムの写真撮影日に欠席した気の毒なクラスメイト図になるんじゃないか?」
「うん?」
「え?」
「おお、それだ」
どっかで見たことあるのに思い出せなかったんだよね、と犬飼が深く頷き、ココアクッキーに手を伸ばした。
名前はため息をついた。
「でも、脚長族と短足族の比較図や四天王図が出回るよりはずっとよいから」
名前は嘆息に安堵も混じるのを自覚しながら呟いた。
かくして、今年の進学広報秋号の表紙スナップは、欠席したクラスメイトが右上方にゲスト出演する卒業アルバム図――にはならなかった。脚長族と短足族の比較図――でもなく、四天王図再び――にもならなかった。
弓場拓磨、蔵内和紀、神田忠臣、苗字名前。照明パワーとカメラマンさんの技術パワーーで格好良い陰影コントラストマシマシとなった四者アップの写真が表紙を飾った。それぞれのワンショットを四つ割りに配置した表紙となったのだ。妹の意を汲んで直談判しにきた兄と映えを考慮して渋る根付室長の様子を見かね、弓場が進言してくれた結果らしい。
「うわ、治安悪すぎ」
けらけら笑っていたのは犬飼澄晴だ。
「敵幹部が初登場する見開きシーンで見たことある奴じゃん」
頬と口元をにやにや緩めていたのは、加賀美倫と国近柚宇だ。
貴重なご感想に名前も全面同意した。けれども、名前はこの表紙がお気に入りである。スクールライフを平穏無事に過ごせることが約束されたかけがえのないスナップなので。
これは余談であるが、今回の進学広報秋号表紙で最も話題を攫ったのは弓場拓磨である。換装時とオフ時の姿のギャップに六穎館高校中が騒然となった。インテリなのか、ヤンキーなのか。「シュレーディンガーの弓場先輩」は今年の六穎館高校流行語大賞に迫った。
移動教室ですれ違う先輩に名前が挨拶するたび、弓場の顔を見たクラスの友人はマガジンマーク「⁉」でいっぱいになっていた。けれども、弓場はといえば、特にどうということもなく、ただいつも通り鷹揚に「おう」と挨拶を返してくれた。
やはり持つべきものは平穏と静寂を愛する尊敬すべき先輩である。