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潮江文次郎の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』「曖昧な約束」更新
潮江先輩の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』- 小品集『さよならの手のひら』より掌編「さよならの手のひら」(潮江文次郎先輩と)公開

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アドベントカレンダー企画25日目です。潮江先輩ご卒業記念に寄せた小品集『さよならの手のひら』より1本ずつ蔵出しをさせていただきました。

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 めったにないくらいの従兄殿の優しさに、伽夜は少しだけ微笑った。しかし、その笑みが、いつもと違って上手く保てない。笑おうとすればするほど、どんどんと視界が滲んでいく。
 けれども、文次郎の瞳が、ふっと柔らかなものとなった。
 昔も言ったが――と落とすような声音で紡がれた。

「そっちの方が、ずっと伽夜に似合ってる」

 ほんの一瞬だった。
 桜色の花びらが舞い落ちる中で、その淡さに溶け入るかのように彼は小さく笑った。
 涙を零すまいと懸命に彼を見上げていた伽夜は、目を瞠った。

 まばたきを返せば、いつものように眉間に皺を寄せ、まるでそれが当たり前みたいな顔で、文次郎は伽夜を見下ろしていた。
 思い出と重なるその光景に、目の奥がじんと痛んだ。


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毎日お知らせしていて恐縮ですが、この小品集『さよならの手のひら』はすべてセットでお読みいただきたいお話を集めています。思い入れが強い作品なので、胸がいっぱいで何も言えないぜ……。最終日も書いた当時の始末書原文ママ失礼しますね。

「ひとさじのしあわせ」について
最初のお話「たゆたうひとひら」と合わせて一つのお話です。六年生ご卒業おめでとうございますの段。こちらでのテーマは「撫でる」でした。

彼がそう言ってくれたから彼女は笑うんです。だから、笑顔でいようとするのです。
とはいえ、「めったなことがない限りは泣かない」という彼女の性格上、いつもは寸止めで終えていたのですが、今回ばかりはとうとう泣かせてしまいました…。ごめんねー。

ガンガンと桜を出してしまいましたが、書いている間は疑問符がずっと頭の中を飛び交っておりました。ソメイヨシノじゃない桜だから葉っぱも一緒に出るのかとか、当時から桜は品種改良していたのかとか…。一番悩んだのは、暦がどうなのかということです。当時の暦と忍術学園周辺の場所を踏まえると、如月から弥生にかけてが桜の咲く頃で、六年生が卒業するのもちょうどそのころでいいんですよ ね?(どきどき)
また、話の中で「卒業」という単語を直接的には出していないので、とても分かりづらいお話かなあと思います。どこまでも自分に優しいペースの作品で申し訳ないです。


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小品集『さよならの手のひら』とリンクしている「二律背反する感情の狭間で」もご案内いたします。
二律背反する感情の狭間で...

たゆたうひとひら...

結んで 開いて...

曖昧な約束...

ひたむきな手...

ひとさじのしあわせ...

さよならの手のひら...


「いいねボタン」一押し・Waveboxからの絵文字エール をいつもありがとうございます。記念に一押し、いかがですか? お好きな絵文字押し放題ですぜ!


本日をもちまして、アドベントカレンダー蔵出し企画、ゴールとさせていただきます。お付き合いいただき、まことにありがとうございました!
文次郎ちゃんと伽夜ちゃん
文次郎ちゃんと伽夜ちゃん

潮江文次郎の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』「曖昧な約束」更新
潮江先輩の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』- 小品集『さよならの手のひら』より掌編「ひとさじのしあわせ」(潮江文次郎先輩と)公開

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アドベントカレンダー企画24日目です。例によって例の如く潮江文次郎先輩とお送りしています。潮江先輩ご卒業記念に寄せた小品集『さよならの手のひら』より1本ずつ絶賛蔵出し中です。🌸


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「伽夜」

 名を、呼ばれる。
 黙したまま、一歩ずつ、一歩ずつ廊下を踏みしめてその背中を追いかける。足を動かすうちに徐々に笑いが込み上げてきた。
 震える唇を手で押さえ、吸い込んだ空気と一緒に笑いを呑みこむ。
 けれども、どうしようもなく頬が緩むのだけは止められなかった。


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毎日お知らせしていて恐縮ですが、この小品集『さよならの手のひら』はすべてセットでお読みいただきたいお話を集めています。思い入れが強い作品なので、胸がいっぱいで何も言えないぜ……。本日も書いた当時の始末書原文ママ失礼しますね。

「ひとさじのしあわせ」について
「差し出す」のがテーマ。ゲンコツはテーマじゃないですよー。いえ、こちらもきちんと書けて楽しかったことは否定しません。(笑)図書委員になりましたの段。ごくありふれていることって、とても幸福なことでもあると思うのです。長さも流れも理想的で、個人的に一番好きなお話です。雷蔵が特別ゲストでした。名前のみなのでギャラなし。(爽)

ちなみに文次郎が飛ばしたのは会計ジョークです。安藤先生も(ギャグを解するセンスのかけらもないと)認めるお人ですから、かなりのやり手ではないかと…!


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小品集『さよならの手のひら』とリンクしている「二律背反する感情の狭間で」もご案内いたします。
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12月20日から最終日25日までは潮江先輩卒業記念に寄せた小品集「さよならの手のひら」から一つずつ蔵出ししています。
アドベントカレンダーのカウントダウン日数は、イブまで24日間が一般的だとご存じか? ですが…! なんと……!! 今回に限り………!!! 当サイトでは、明日25日までアドベントカレンダー企画をします!!!!!!!! いよいよ明日が蔵出し企画最終です。楽しんでいただけますように。
潮江文次郎の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』「曖昧な約束」更新
潮江先輩の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』- 小品集『さよならの手のひら』より掌編「ひたむきな手」(潮江文次郎先輩と)公開

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アドベントカレンダー企画23日目です。引き続き潮江文次郎先輩をお送りしています。潮江先輩ご卒業記念に寄せた小品集『さよならの手のひら』より1本ずつ絶賛蔵出し中です。🌸


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「どうでもいいが、そんなに見るもんじゃねえぞ。きれいじゃねえんだからよ……」
 眉根は僅かに寄せられ、瞳には形容できない悲しい色がにじんでいた。けれども、手のひらはそのままだった。声音もずっと穏やかだ。
 胸の奥の色んなものが溶け出してしまいそうで、伽夜は大きく吸い込んだ息を吐き出した。

「……私は好きですよ」
 指先は少し冷たかったけれど、包帯に巻かれたその手のひらはとてもあたたかい。

「豆だらけでごつごつしていて。皮が厚くって、がさがさしていますし」
 胸が締め付けられるのに耐えきれず、言葉を切った。小さく息を吸いこんで、紡ぐ。

「格好悪いくらいがむしゃらで。そのくせ、笑っちゃいたくなるくらい不器用で」
 重ねた手のひらから伝わってくる、じわりと染みるようなあたたかさ。泣きたくなるようなあたたかさだ。

「でも、この手のひらは他の誰にも負けないくらい、ずっとひたむきなものですから。私は好きです」


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「ひたむきな手」について
従兄殿が三年生、従妹殿が二年生の時のお話です。
実は保健委員だったのでしたの段。テーマは「重ねる」でした。
どこが春なんだと突っ込まれそうですが、「うららか」というのは春に用いられる形容動詞・季語ですよね~とささやかに主張。

忍術学園で年単位で学んでいくに従って、「忍び」というものについて真正面から向き合うことが多くなるのではないかと思います。

ずっと出したかった保健委員時代エピソードをようやく書くことができて大満足でした。(笑)
伊作は後に不運委員長になるわけですし、きっと当時から筋金入りの不運小僧だった…と思うのです。たぶん。うちの子もご本家様の現三年生方向音痴コンビが入学するまでは方向音痴係として名を轟かせていた…らいいのになあという大変勝手で迷惑な願望も混じっています…。当時の委員長が二人を留守番にしたのは、いじめではありません。いじめ、ダメ 絶対。(…)委員長は、不運委員長として他の委員を束ねるお人なので、きっと毎年不運…じゃなかった、保健委員を務めている方だと思うんです。で、たぶん昨年のあれやこれやをきちんと踏まえて何やかんやと予防策を張ったんです。たぶん。…何だかこの反省文だけで「たぶん」を1週間分使った気がします…。


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12月20日から最終日25日までは潮江先輩卒業記念に寄せた小品集「さよならの手のひら」から一つずつ蔵出ししています。
明日はいよいよクリスマスイブ! ということは、アドベントカレンダー企画も残り2回の更新となりました。宣材と合わせてどうか楽しんでいただけますように! 明日もよろしくお願い致します。
潮江文次郎の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』「曖昧な約束」更新
潮江先輩の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』- 小品集『さよならの手のひら』より掌編「曖昧な約束」(潮江文次郎先輩と)公開

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アドベントカレンダー企画22日目も潮江文次郎先輩をお送りしています。潮江先輩ご卒業記念に寄せた小品集『さよならの手のひら』より1本ずつ蔵出し中です。🌸


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「……文次郎ちゃんも?」
「…………ばかたれ」

 ぞんざいな一言だったが、不器用な彼なりの答えに聞こえた。
「わかりました。代わりに文次郎ちゃんも約束して下さい」
 言って、右手をそっと伸ばした。左腕を彼の首に回し、落ちないように体重を預ける。伸ばした方の右手の小指で相手のそれに軽く触れた。伸ばすだけで精いっぱいで、かけ合わせることまではできなかった。だから、祈るように呟いた。

「あまり無理はしないで下さい」
「……してないことまでは約束できんぞ」
「説得力がないので却下です」

 戻した右手の人差し指で、彼の目の下をトンと押した。
 返事はなかった。けれども、彼の頭が上下に揺れ動くのが見えた。

 文次郎の足取りに迷いはない。しかし、その歩みはとても静かなものだった。
 彼は、伽夜の足首に震動が伝わらないように気遣ってくれていたのだ。
 理解した瞬間、息が詰まった。
 思わず彼の両肩をぎゅっと掴む。それでも――目のふちに盛り上がったものがあふれてしまいそうで、伽夜は顔を伏せた。


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シリーズタイトル『曖昧な約束』回収の段! でした。
この小品集はすべてセットでお読みいただきたいお話です。思い入れが強い作品なので、胸がいっぱいで何も言えないぜ……。例によって例の如く、書いた当時の始末書原文ママ失礼しますね。

「曖昧な約束」について
「指きり」がテーマ。従妹殿が入学しましたの段。このお話が一番の難産でした。
曖昧なのは、きちんと交わしたものではないからです。今回、とうとうこの連作に使ってしまったのですけれど、「曖昧な約束」が文次郎とその従妹のお話の個人的なシリーズ名だったりします。兄弟よりは遠くて、友達よりは近い。いとこ同士って、血縁こそあってもお互いに意識しなければ簡単に疎遠になってしまう。そんな曖昧な間柄なのではないかなあと。

いかに当時に関する知識が欠けているかということを心底痛感したお話でした。というのも、蓮華草が日本で栽培されるのは、もう少し時代が下がった江戸時代からなんで す…。万葉集にもいくつか詠まれている、日本古来の春の花の代表スミレにすべきかどうか最後まで悩みました。しかしながら、そちらはどうも彼らの柄ではない高貴なイメージの花なので、一緒に摘んで遊んでもらいたいという己の願望を優先しました。でも、蓮華草も室町時代には日本に帰化していた(らしい)ので、目を瞑って頂けると嬉しいです。……や、彼女のお父さんは本草学オタクなので、ありだと力説させて下さい。ええと、たぶん、何やかんやで入手しておうちで育ててますよ、たぶん。……何やかんやは、何やかんやです!(…)


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繰り返しのアナウンスですが、12月20日から最終日25日までは潮江先輩卒業記念に寄せた小品集「さよならの手のひら」から一つずつ蔵出ししています。アドベントカレンダーもいよいよ残すところ3日となりました。宣材と合わせて楽しんでいただけますように!
潮江文次郎の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』「結んで 開いて」更新
潮江先輩の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』- 小品集『さよならの手のひら』より掌編「結んで 開いて」(潮江文次郎先輩と)公開

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握りこぶし。差し出された手のひら。縋り付いた手。ほどいた手。
アドベントカレンダー企画21日目も潮江文次郎先輩をお送りしています。潮江先輩ご卒業記念に寄せた小品集『さよならの手のひら』より1本ずつ蔵出し中です。🌸


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「ばかたれ」
 ぽすん。額に硬い何かを押し当てられた。
「?」
 思わず目を閉じた伽夜は、文次郎の袂を離して額を押さえる。指の間から文次郎が、菓子の包みを持ち上げるのが見えた。

「なんて情けない顔してやがる。……っとに伽夜はばかだな」

 文次郎はやけに大きな声音で告げてきた。
「あのな。今生の別れじゃねぇんだから。休みになったら飽きるくらいまた遊んでやるよ」
 文次郎の目線が先ほどよりも近い。気のせいでなければ、少し眉の力を抜いているようだ。
「それに時々――本当に時々だけど、新しく覚える遊びも文で教えてやる」
 それが笑みだと気づいたのは、こちらの目線に合わせて彼が身体を折るようにしてくれていることを知ったのと同時だった。

「だから、おまえも返事を書くこと。宿題だ」
「……しゅくだい?」


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この小品集はすべてセットでお読みいただきたいお話です。思い入れが強い作品なので、胸がいっぱいで何も言えないぜ……。そのため、引き続き、書いた当時の始末書原文ママ失礼しますね。

「たゆたうひとひら」について
思い出一本目のテーマは「掴む」でした。文次郎、忍術学園に入学するの段。
あんなにも慕っていた“いとこの文次郎ちゃん”が急に遠くへ行ってしまうというのは彼女にとって、天地がひっくりかえるような出来事だったんです。

文次郎ってとことん不器用な子だからさ、許しておやりよ、と書いている途中何度も思いました。(笑)



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たゆたうひとひら...

結んで 開いて...


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繰り返しのアナウンスですが、12月20日から最終日25日までは潮江先輩卒業記念に寄せた小品集「さよならの手のひら」から一つずつ蔵出ししています。楽しんでいただけますように。それでは、また明日お会いしましょう!
潮江文次郎の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』「たゆたうひとひら」更新
潮江先輩の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』- 小品集『さよならの手のひら』より掌編「たゆたうひとひら」(潮江文次郎先輩と)公開

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アドベントカレンダー企画20日目は、潮江文次郎先輩でした。潮江先輩ご卒業記念に寄せた小品集『さよならの手のひら』より1本ずつ蔵出ししていきます。🌸


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 満開の桜の下で、少女の視野はただじっと一点を捉えている。
 空色に若葉色、茄子紺色の装束をまとった生徒が輪を作っている。彼らは輪の中心人物の静かな語りを、身動き一つせずに聞き入っていた。輪の中心には草色の装束をまとった六年生が、背筋をぴんと伸ばして立っていた。
 少女は、大きな瞳を絞った。そのひとの輪郭が、際立った。
 草色の装束は、くたびれているようにくすんで見える。ところどころ引っかけたように糸がほつれている。離れていても、目の下の隈ははっきりと見えた。けれども、その表情はひどく穏やかだ。
 振ろうとしていた手のひらを、ゆっくりと降ろした。無意識に力が込もる。覚悟していたはずの心が、今更になって震えた。

 ついにそのひとが、口を閉じた。話は終いだ、と片手をひらりと振る。
 それが、合図だった。
 井桁模様の浮かんだ制服に身を包んだ一年生たちが、そのひとに飛びついた。そのひとは微苦笑のようなものを漏らす。しょうがねぇなあ、というように唇を短く動かして、両手で一年生二人の頭を乱暴に撫でた。たまらずに三年生も四年生も一年生ごと彼めがけて飛び込んでいく。


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この小品集はすべてセットでお読みいただきたいお話です。思い入れが強い作品なので、胸がいっぱいで何も言えないぜ……。そのため、書いた当時の後書き原文ママ失礼しますね。


さて、この「さよならの手のひら」は、先の閉鎖前に企画倒れで終わってしまった「春よ、こい」企画用にあたためていたお話です。「二律背反する感情の狭間で」とそこはかとなくリンクしています。

行き当たりばったりな私にしてはとても珍しく、コンセプトが色々とありました。今となっては、詰め込みすぎたために構想当時、企画倒れしたのかな~と妙に納得しております。コンセプトは以下のとおりです。
・文次郎の卒業記念に寄せて最終回っぽい話を書く。
・「春よ、こい」企画として、時間軸は全て春に限定する。
・「掌(てのひら)の小説」のオマージュで「掌(たなごころ)の小話」を…。川端先生、ごめんなさい。
・↑を踏まえて、全編通してそれぞれ手のひらにまつわるエピソードを描く。(これは駄洒落たかったのが大きいです)
・「手のひら」だから、お話の数は全部で5本。
・卒業→思い出のアルバム→思い出がいっぱい…というセルフ連想ゲームに則って、潮江さんちの従兄妹ズのクロニクルをお送りする。


「たゆたうひとひら」について
あのひとをみんなで取り囲む会の段でした。最後のお話と合わせて1つのお話となります。こちらでのテーマは「別れの挨拶=振る」でした。

彼を囲んでいるのは、もちろん委員会でおなじみのあの子たちです。普段、鬼のような彼ですが、頼りがいのある先輩だと思うのです。後輩からは心の底では慕われているといいなあ。
かの四年生が三年生の彼を迷子にしないように首根っこ掴んでこの場に居るという裏エピソードがあるのですけれど、彼女の視界には全く映っていなかったようです。(笑)

…ぼかしたり、指示後を使うのが大好きです。



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「二律背反する感情の狭間で」もご案内いたします。合わせてお読みいただけると嬉しいです。
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たゆたうひとひら...


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重ねてのお知らせとなりますが、本日12月20日から最終日25日までは潮江先輩卒業記念に寄せた小品集「さよならの手のひら」から一つずつ蔵出しします。最後まで楽しんでいただけますように。それでは、また明日よろしくお願いします。
潮江文次郎の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』「星灯る」更新
潮江先輩の従妹友情シリーズ『曖昧な約束』- 小品集『小さい秋、みつけた』より「星灯る」(尾浜勘右衛門くんと摂津のきり丸くんと今福彦四郎くんと)公開

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アドベントカレンダー企画19日目は、vs尾浜勘右衛門くんでした!🍃


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12月15日から19日までの5日間は、五年生との小品集『小さい秋、みつけた』より蔵出しキャンペーンです。秋をテーマに五年生全員それぞれとわちゃわちゃするおはなしを集めてお送りしました。

無垢なるひとひら...

陽だまりの攻防...

世にも微妙な物語...

探し物は何ですか...

星灯る...

小品集なので5作品とも宣材のテイストを合わせています。



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「違いますよう。伽夜先輩が先に来ているだなんて。明日は雨かあ……。さよなら俺の洗濯バイト。秋晴れ期間は稼ぎ時なのに」
「え、泣くほど……?」

 顔から全部出るものを出し始めた後輩に、伽夜は戸惑って声も頬も引きつらせる。彦四郎が大きな瞳をぱちくりさせた。
 明るく晴れやかな声がこれまた図書室に響き渡る。

「つまりだな、学園で五指に入ると名高い方向音痴の上月が最短経路で図書室に辿り着くという極めて珍しい出来事が起きたのだ。事件と言っても過言ではない」
「ああ、それは珍しいですね。明日は雨が降ってもおかしくないかと……」

 ぴん、と人差し指を立てた勘右衛門の親切な解説に、彦四郎がうんうん、と頷いた。とてもよい子である。伽夜はがっくりと肩を落とした。

「尾浜くん。事件だなんて心外です。少し不思議なことにいつも通る道順が何故だか変わっているだけなんですから。毎日新鮮ですし、最終的には目的地にも辿り着いていますし問題なしですよう」
「いやいや、不思議すぎるし問題しかないだろ」
 勘右衛門が真顔でなにやら言っているが、とりあえずそれは無視。よい子に笑いかける。


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このシーン、短いながらもそれぞれの関係性がうっすら出ていて好きです。彦四郎くんは、「あの学園一ギンギンに忍者してる潮江先輩の従妹」と対面しているということにハチャメチャ緊張しているのだと思われます。優秀な子達ほどあれこれ予想して身構えるんじゃないかな~。実際会ってみて「全然似てない……」とガッカリすること多そうです。

初書き尾浜くんです。
何を隠そう、わたくし、夢創作は出戻り組でして。以前、忍たま・落乱夢創作サイトをしていたのは、尾浜くんが登場する前の時代でした。尾浜くんや浜くん、羽丹羽くんたちが登場する前に一旦夢創作から離れていて、その後ワールドトリガー村に転がり落ちて恥ずかしながら戻ってきた次第です。
こちらのお話は、夢創作に出戻り、オンラインイベント参加に合わせて2023年に書きました。せっかくの五年生の小品集だから全員揃えたいな、と。
尾浜くんと絡むのは初めてなので、伽夜のテリトリー図書室でのお話となりました。ゲストは彦四郎くんときり丸くん(友情出演ギャラなし)
五年生が下級生の優しいお兄ちゃんをしているのが大好物なのでそちらを詰め込みました。執筆中、懐かしくて幸せな時間でした。
秋の小品集、久々知くんの世にも微妙な物語を除いた4本がそうしたお兄ちゃんしてる五年生のおはなしでしたね。私の趣味が満載です。

五年生の小品集蔵出しが終わったので零れ話でも。
■同学年の五年生同士の呼称
伽夜→五年生のことを、それぞれ「苗字+くん」呼び

久々知くん→「上月さん」
尾浜くん→「上月」
竹屋くん→「上月」
鉢屋くん→「上月」
不破くん→「伽夜ちゃん」

Q.なんで名前呼びされないんですか?
A.あの潮江文次郎先輩の従妹だから。

五年生が潮江先輩を恐れている、とかではなく、「潮江先輩の従妹」というパブリックイメージがあまりにも強く、伽夜と接する際にどうしても潮江先輩の顔がちらつくのでビジネスライクに苗字呼びなんじゃないかな~。
久々知くんは真面目で育ちのよい子なので敬称付けて呼んでくれそうですし、不破くんは同じ図書委員会同僚のよしみです。決して特別な関係ではないです。なんとなくですが、不破くんは温厚な子なので、入学時からも学年上がってからもくのいち教室の子たちとも穏やかに接してくれそうですよね。入学時から呼び方も態度も変えずに接してくれそうですし、くのいち教室の子たちもまた彼の穏やかな人柄を受け入れて友好条約結んでいそうですよね。五年生はどの子も温厚なのですが、不破くんはいっとう特別温厚なんじゃないかなあ。


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